小窓から誰かが見ている(キャッシュレス)

 もう20年も30年も昔になるでしょうか?

 税務署には「派出銀行」と呼ばれるスペースがあり、そこで税金の納付ができていたと聞いたことがあります。

 全く使われていない小さな窓のような名残りもあったような、そんな記憶もかなりうっすらとしてきました。

 現在の税務署では、金融機関が庁舎内で窓口を設けている光景は見かけなくなりました。

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わざわざ払いに来てやったんだぞ!

こんなことされたら、カスハラじゃ済まされません。

 「税務署は税金を取ろうとするくせに納付ができない」のは官民お互いに不便不都合であるだろうということで、税務署内には現在も納付の窓口があります。

 ただしそこで対応するのは税務署の正職員であり、派出された金融機関の職員ではありません。

 私もその担当を数年間させていただいたことがあります。

 「うちは金融機関でありません!」とはあんまり強く言いにくいなと思いながらも、領収書の作成と交付を担当していました。

 それはどうしてかと言うと、受け取った現金や小切手は私たちの手で金融機関に払い込みに行くのです。

 税金は「日本銀行歳入代理店」の業務を行なっている金融機関であれば、税務署を通さなくても納税が可能です。

数えてる途中で話しかけないで

 私も一人の「国税出納官吏」でしたから現金を受け取る権限はあっても、だからと言ってお金を数えるのは結構怖い思いものです。

 内心嫌がらせと言いたくなるほどの現金(たしか1000万円ぐらい)を、滞納していた分として持参してきた納税者の方がいました。

 当時はお札を数える機械は庁舎内に設置が無かったので全て手で数えます。全ての札束に100万円ごとの帯付が付いていてもです。

 納税者の目前で全てを2回数えて、1回目と2回目で枚数が合わなければやり直し。2回連続で同じ金額になるまで数え続けます。

 すると手はどんどん震えていき、まさに「負のループ」です。

テレビドラマでは小林薫さんでした

 青木雄二原作の漫画「ナニワ金融道」第1巻でこんな場面がありました。

 主人公が務める貸金業者の先輩は借入れを申し込んだ顧客へ資金を渡す際、100万円の札束のひとつから一万円札を陰で1枚抜き取ってから顧客に領収書を作らせる場面がありました。

 しかしその顧客は急いでいたせいか、99万円しかない札束があるのにそれを数えもせずに領収書を渡してしまうのです。

 抜き取った1万円札はその後の主人公たちの昼食の豪華ステーキになって、その後の仕事のために英気を養います。

 「領収書があるのだから、最高裁でも勝てる」とまで。

2・3(兄さん)、寄ってらっしゃい

 サラリーマンのボーナスの時期に、銀行員が1万円札を扇のように広げて2枚・3枚・2枚・3枚と左手の親指で押さえている映像を見たことはありませんか?

 「税金は窓口で払うのが当たり前」「お札は手で数えるもの」というここまでの話は、もう時代遅れです。 

 国で「IT社会の推進に向けた基本政策」が作られてからもう20年以上になり、国税庁もキャッシュレス納付の推進を図っています。

 口座振替や国に先行して作られた金融機関のシステムはかなり前からあります。

 そしてパソコンやスマートフォンを使った方法も始まっており、利用者が増えてきました。国税庁はさらに推進を目指しています。

 その一方で「領収書はどうしても紙でないと」と言う声も聞いたことがあります。

 そこには納税者本人でないところにも「紙」を求める風潮があるからです。

 私も最近「紙」の領収書をある団体から求められました。

 これも時代錯誤であり、とても憤りを感じています。

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