人が人を評価する時代は終息するか

 企業の人事評価制度を廃止すべきというニュースは数年前に聞いたことがありましたが、学校の通知表についても同様のことが起こっていることを初めて知りました。

 小学校の通知表と企業の人事評価はどちらも廃止すべきだという意見があり、実際にそういった動きがあります。

☆朝日新聞コラム 天声人語「通知表がなくなると」 https://digital.asahi.com/articles/DA3S16212233.html?iref=pc_rensai_long_61_article

目次

小学校の通知表廃止論

 小学校の通知表については、近年特に低学年を中心に廃止の動きが出てきています。

 神奈川県の茅ヶ崎市立香川小学校で2020年に通知表が廃止されたというニュースがメディアで大きく取り上げられ、賛否両論を巻き起こしました。

(廃止の理由)
・通知表の「◎」「〇」「△」といった段階評価が、子どもに過度な劣等感を抱かせたり点数を競うことばかりに意識を向かせてしまう
・一方的な評価は子どもを伸ばすためには繋がらない
・特に低学年の通知表は教育用語が多く、保護者にとっても理解しにくい
・通知表作成にかかる教員の負担が大きい

 今年に入っては岐阜県美濃市でも小学1年生および2年生の通知表が廃止されることが報じられています。

☆朝日新聞「小1の通知表廃止 伸びやかに育ってほしい」 https://digital.asahi.com/articles/AST524JFFT52OHGB006M.html

企業の人事評価廃止論

 企業の人事評価についても、特に欧米の先進企業を中心に廃止または見直しが進んでいます。

(廃止の理由)
・従来のランク付けや相対評価は社員のモチベーションを低下させ、協力関係を阻害する。
・現代のビジネス環境は変化が速く、目標設定がすぐに陳腐化したり複雑な業務内容を画一的な評価基準で測ることが困難。
・評価者であるマネージャーの評価に対する精神的負担や、評価調整にかかる工数が大きい。
・評価制度への不満が人材流出の原因になる。

 GEやGoogleといった大手企業で、従来の年次人事評価制度(ランク付け)を廃止する「ノーレイティング」が注目されています。

☆株式会社ジィ・ディー・エル「人事考課はほぼ全員B(普通)?」 https://www.gdl-j.co.jp/archives/002691.html

通知表と言えばこの3人

 どちらの意見も従来の評価制度がもたらす弊害(競争意識の過熱・モチベーション低下・形式主義など)を指摘し、より本質的な成長支援やコミュニケーションを重視するという点で共通しています。

 通知表を廃止する学校では個別のフィードバックや面談などを通じて子どもの成長をより具体的に伝え、保護者との連携を強化。

 企業においても年次評価に代わって日常的な1on1ミーティングやリアルタイムでのフィードバックを重視し、社員の成長を支援。

 評価を全くなくすのではなく、質的なフィードバックや対話を通して個人や組織の成長を促すという方向で検討が進んでいます。

 天声人語の冒頭で触れられている「カツオくん」「のび太くん」「まる子ちゃん」の3人。
 先生からのフィードバックで各々のお母さんの顔が引きつっていく姿が、とても笑えそうです。
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