カール・サムナー・シャウプ(Carl Sumner Shoup)は1902年10月26日生まれ。
アメリカの租税法学者であり経済学者。コロンビア大学の博士を務めました。
1949年(昭和24年)5月10日に戦後日本の税制使節団長として来日。
「日本における恒久的な租税制度を立案する」という目的を掲げた、日本の戦後税制の生みの親と言われています。
シャウプ勧告以前からの問題点

第二次世界大戦の影響を受けて、戦後直後までの日本の税制は不公平でかつ税収が不安定なものでした。
直接税(所得税や法人税)の徴収率が低く、税収は間接税(物品税)に依存。
経済の変動に影響を受けやすい状況でした。
戦時中に導入された臨時税や物価統制による影響で国民の税負担が非常に重くなり、脱税や税逃れが横行します。
高所得者には税を逃れる手段が多く、逆に庶民への税負担の増加に偏っていきました。
地方税の制度も脆弱であったため、地方財政も弱体化していきます。
国からの交付金に依存する構造になっていました。
シャウプ勧告の内容
1949年に来日したカール・シャウプ博士を団長とする使節団が作成し、日本の税制改革を目指す連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)に提出された報告書による勧告です。
所得税を中心とした公平な税制を確立。
直接税(所得税・法人税)の税率を引き下げつつ、累進課税の原則を採用。
高所得者の税負担の適正化。
低所得者層への過度な負担を減らして最低生活を保障。
旧大蔵省とは別組織の設置を提言。
住民税の充実や地方独自の税制の導入。
地方自治体の自主財源を増やし、中央政府からの財政依存の削減。
税制をわかりやすくすべく、不要な税目を廃止。
勧告の効果
この勧告により「直接税中心の公平な税制」「税務行政の近代化」「地方税の強化」が進められ、日本の近代的な税制の基礎が築かれます。
所得税中心の税制は申告納税制度のもとで強化され、地方税制度が充実して行きました。
1952年には国税庁が設立されます。
しかし勧告のすべてが受け入れられたわけではなく、その後の経済状況や政治的要因によって一部修正された部分もありました。
勧告を振り返って現代の税制を読み解く

シャウプ勧告の原文はネット上で簡単に読めるものではないようで、これを読むためには国立国会図書館や有料の閲覧サイトに入っていく必要があります。
ただし内容を訳している投稿を見ることができました。
☆「シャウプ使節団日本税制報告書」第十四章 https://www.rsl.waikei.jp/shoup/shoupj14.html#subsection14d
ここで触れられていることの一つに「目標額制度」という項目があります。
来たるべき会計年度の所得税収入の推計を、当時は各税務署の管轄する各地域ごとに天下り式に課していたとのこと。いわゆる税収の「ノルマ」なのでしょう。
勧告文の中では、税金を徴収するためにどうしても必要な制度と言うのならば「所得税は撤廃した方がよい」とまで言わしめています。
結局現在において所得税は「撤廃」されることなく、「目標額」の方が撤廃されています。
しかしそんな「ノルマ」のイメージはまだ根深く残っているかもしれません。
私が滞納整理を担当していたおよそ20年前、納税者(滞納者)から「お前もノルマはあるのか?」と聞かれた際には「担当事案はすべて滞納0円にしろと上司から言われているんですー(涙)」と嘘泣きしながら答えていました。
勧告前と勧告後、そして現代はどこまでこの勧告が反映されているかの3つの時代に分けて考えていくと、とても興味深いものであることに気付かされました。