私が元の職場に入った1年目の研修で応接についての授業があり、そこで使われた講義本が自宅に残っていました。
あらためて読むと若干回りくどいなと思いつつ、現在の感覚でも納得したり自戒の念にさいなまれるところがありました。
接遇マナーは30年前と比べると、社会の変化や時代背景に合わせて進化しています。
基本的な「思いやりの心」や「相手への敬意・礼儀」といった根幹部分は変わりませんが、コミュニケーションの手段や社会的価値観の変化により求められるスキルや考え方に変化が見られます。
言葉遣いと敬語の変化
これまでは、決まったマニュアルに基づく対応と正しい敬語を使用することが重視されてきました。
丁寧・型通り・格式ばった表現や「ご機嫌うるわしゅうございます」のような伝統的な敬語が採用されていましたが、私は当時から恥ずかしくて使えていませんでした。
言葉遣いの他に態度や立ち振る舞いにも「正しさ」に重きが置かれ、画一的な接遇が一般的でした。
現在は過剰に堅苦しい敬語よりも、相手に伝わりやすいシンプルな表現が求められるようになっています。
「お伺いさせていただきます」のような冗長な敬語ではなく「伺います」というように。
コミュニケーション手段の多様化
以前は顔を合わせた接客や電話対応が基本であり、対面での礼儀を重要視していました。
しかし手書きのメモや口頭でのやり取りが一般的でしたので、技術的なサポートは限られてしまいます。
現在は電話やメールに加えてコミュニケーション手段が多様になりました。
特にチャットポッドやSNSでは短い文章で正確かつ感じの良い表現とともに迅速で的確な回答が求められるため、対面以上に簡潔で正確な表現が必要です。
ただ自動化が進む一方で、人が対応したときの「心のこもった接客」がより高く評価されるようになりました。
多様化の中には「人」が含まれているとも言えます。
身だしなみの変化
服装には堅苦しいフォーマルさが求められることが多く、制服やスーツの着用が一般的でした。
そして化粧や髪型についても厳格な規定による清潔感を重視。
特に女性にはスカートやナチュラルメイクなど、性別による基準が課されることが多かったようです。
現在は多様性が認められつつあり、個性を生かした「柔軟な清潔感」が重視されるように。
特にIT企業やクリエイターのような業種では、リラックスした服装やカジュアルな身だしなみも許容されてきました。
ハラスメントへの意識の高まり
顧客の理不尽な要求や言動に対して従業員が「耐える」ことは、今や警察ごとになりかねません。
現在はハラスメント防止や従業員のメンタルケアが重視され、もし顧客が過剰な要求や攻撃的な態度を取った場合、毅然と対応するためのルールや指導が進んでいます。
従業員の身体に触れようものなら、その時点で警察を呼ばれてしまいます。
でも決して卑屈にはならないで
最近になって見受けられるようになった海外文化の移入や顧客の価値観の変化への対応とも併せて、相手を思いやる心や礼儀を大切にする姿勢は昔と変わらず重要です。
そしてこれも最近になって注意すべき点になってきたものが、インターネット上での評価です。
悪い評判は瞬時が広がるというリスクを意識しながらも、顧客への思いやりや敬意・礼儀に必要な仕事は堂々と進めていきましょう。