最近では珍しく、宮坂さんは国税庁のホームページをのぞいています。
その中で掲載されている「中学生の税についての作文」の作品を読んでいました。
たびたび起こる災害に対してみんなが安心して暮らしていくためにはどうすればいいか、そういった問題を抱える動物たちがテーマの作文に目が止まったのです。
☆国税庁「税の作文(中学生・高校生)」 https://www.nta.go.jp/taxes/kids/sakubun/chugaku/r03/index.htm
とても奥深い内容の作文

町のサルたちが話し合ったところ、「一人でどうにもできないことはみんなで協力すればいい」との結論に。
それから動物たちは税金を出し合うことで、住みやすい町になりました。めでたし、めでたし。
と、作文がここで終わっていたのなら「ありふれている作文だな」という印象でした。
しかしこの後「まだ続きが」。町外れでのフクロウとリスのやり取りに変わります。
フクロウは「サルたちは集めた税金を公共事業や社会保障などに充てた」という話の後、昔はここにたくさんの人が住んていたとリスに話しています。
人がいなくなった理由は、度重なる増税に不満を持った人同士が争うようになったから。
そして人はそこから逃げ出し、人の国は滅んでいったと。
作文は「今一度税の在り方について考えるべき」との言葉で締めくくられています。
映画はさらに奥深い

最初は税金の話だったはずですが、私はこの話から映画「猿の惑星」を思い出しました。
1968年に公開されたアメリカのSF映画で、フランスの作家ピエール・ブールの小説が原作です。
知能を持つ猿が支配し人間が劣位に置かれた異星を舞台にした物語です。
宇宙飛行士のテイラーたちは宇宙旅行の末に見知らぬ惑星へ不時着。
そこで彼らは、知能の高い猿が支配し人間が原始的な存在として扱われている社会に遭遇します。
テイラーはやがて猿たちに捕えられますが、猿の科学者ジーラやコーネリアスの助けを得て猿の世界の秘密を探ろうとします。
文明や人間性についての哲学的な問いを投げかける作品で、種族差別や科学倫理にも触れています。
名優チャールトン・ヘストンの演技と猿を演じた俳優たちの特殊メイクもリアルです。
そして知る人ぞ知る「あの衝撃的なラスト」が待っています。
ちなみにウイキペディアでもラスト場面の詳細は書いていませんでした。もう57年も前の作品なのに。
☆ディズニープラス「映画『猿の惑星』シリーズの見る順番」 https://disneyplus.disney.co.jp/blog/maximum-guide/planet-of-the-apes-series
中学生には刺激が強すぎる
作文でも映画でも、安心した生活が叶ってからのサルたちには何ら悪気は無かったでしょう。
ただ悪気が無いのはその時だけのこと。
作文の中のサルは自分たちにとって住みやすい町を作ったところで物語は終わっていますが、映画の中の猿たちは現実に生きる我々人間の考え方と大して変わらない立場。
テイラーたちを先祖とした人は、やがて惑星の中でサルを抑え込むようになる。
しかし人々は増税によって自らを苦しめるようになり、人の国は滅んでいった。
映画の中の「猿」と作文の中の「サル」は同一の存在であると思えてなりません。
作文の作者である札幌市立稲陵中学校2年生濱木星来さんは、この映画を知ってそれになぞらえたのかもしれません。