多数決を用いずに誰一人置き去りにしない社会を作ることが少数派を切り捨てない本当の民主主義であると、中学校の校長を勤めた経験のある工藤勇一氏は言います。
SNSの動画で見られるさまざまなダンス動画

中学校の文化祭の出し物を何にするか決めようとするときに、生徒の意見の8割がダンス派で残りが演劇派に分かれました。
リズムに合わせて体を動かすことが苦手な生徒もおり、その生徒の一人は「人前で踊るなんて絶対にイヤ!」と言います。
ここで多数決を使ってしまったら、2割の少数派は文化祭当日まで疎外感を持ったままずっと堪えないといけなくなるでしょう。
すると他の生徒からアイデアが出てきました。
「ミュージカル風の劇ってどうだろう?」と。
ダンスをしたい子はダンスパートで踊り、劇がしたい子は劇のパートで演じ、人前に出たくない子は舞台照明・音響・脚本などの裏方につく。
これならみんなやりたいことができて全員が楽しめます。
最終的にはミュージカルの案が採用されました。
☆プレジデントOnline「元麹町中校長が文化祭で”多数決の代わり”に使った方法」 https://president.jp/articles/-/90235?page=1
組織のあるべき姿
誰一人置き去りにしないためには、組織としての最上位の目標を共有し全員が合意していることが必要です。
優れた企業の多くは、自社の技術やサービスによって社会に貢献することを最上位の目標としています。
組織の構成員はその最上位の目標を実現するための手段を考え、与えられた権限の中で自律的に実行していく。
最上位の目標が合意されている組織なら、目標の実現を妨げている事柄についても率直に意見・議論できるはずです。
メンバー間の協力が促進できるため、個々の利害や意見の相違が調整されやすくなります。
合唱コンクールでの悲喜こもごも

4年もの時間をかけての試行錯誤の末、麹町中学校では伝統行事だったクラス対抗の合唱コンクールを生徒たちが自ら廃止にしたとのこと。
ダンスと同様にリズムに合わせることと同時に音階が合わせられない生徒が取り残されるという状況に鑑みての判断だったのかと思われます。
時代は遡り、宮坂さんが高校生の時にもクラス対抗の合唱コンクールがありました。
しかし吹奏楽部にいたにも関わらず合唱にはからっきし自信がありません。
案の定あまりに歌えないので、練習中に面倒向かって「音痴!」なんて言う同級生も出てきます。
ミュージシャンとしてのプライドが傷つけられてあまりに悔しかった宮坂さんは、歌わなくていいとされた指揮者に立候補します。
その後「コンクール優勝」という最上位目標を掲げながら迎えた本番では、見事にその目標を達成。
「指揮者は評価の対象外」との事前の告知がされていたにも関わらず、表彰の場面で「指揮が良かった」と審査を担当した音楽の教諭から言ってもらえたことがとても嬉しかったそうです。
SDGsにも

国際社会が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)のひとつ「平和と公正をすべての人に」の中にこういったものがあります。
16-7「あらゆるレベルでものごとが決められるときには、実際に必要とされていることにこたえ、取り残される人がないように、また、人びとが参加しながら、さまざまな人の立場を代表する形でなされるようにする。」
このような共通の目標を設定している国や組織は互いに協力し合い、争いごとの原因となる要素を減らす努力を行っています。
小さな組織でもSDGsのような最上位目標を設定し共有することは、組織やコミュニティ内のメンバーが同じ方向を向き協力し合う基盤となります。
その結果により内部の対立や争いごとを減少させ、より調和の取れた環境を築くことが可能となるでしょう。