リモートワークの完全普及は可能か

 私が勤めていた税務署ではリモートワークを始めてみようとする意図はあっても、なかなかうまく浸透させることには四苦八苦している印象でした。

 数年前のコロナ禍をきっかけに急速に普及したリモートワーク。

 今や多くの企業で働き方の選択肢となっていますが、完全普及となると話は別です。

 そもそもすべての業務でリモートワークが標準となる世界は、果たして理想なのでしょうか?

目次

未来を切り開く働き方革命

 リモートワーク完全普及の最大の魅力は、時間と場所の制約からの完全な解放でしょう。

 通勤時間の削減により、年間で数十時間から数百時間の時間が個人に還元されます。これは単なる時短だけではなく、人生の質的向上を意味します。

 物理的な制約に縛られない働き方は自然な進化といえるでしょう。

 そんな制約の撤廃がされれば、地方在住者や介護・育児中の人材などこれまで労働市場から排除されがちだった優秀な人材の活用が可能になります。

 環境面でも通勤によって発生する CO2 排出量の削減やオフィススペースの縮小による資源節約になるなど、持続可能な社会への貢献は大きいと言えます。

バランスよく分類

 企業規模によってはリモートワークを廃止するところも出てきているという現実が示すように、その効果は一様ではありません。

 業種・企業文化・個人の性格や生活環境によって、その効果は大きく異なります。

 導入にはまず「完全リモート可能」「ハイブリッド」「対面必須」というように、業務の性質による分類が重要です。

 技術面ではセキュリティとコミュニケーションツールの整備、そして時間管理から成果管理への企業文化の変革が必須となります。

失われるものも

 その一方で、リモートワーク完全普及には深刻な懸念があります。

 最も重要なのは人間関係とコミュニケーションの質的劣化です。

 対面でのちょっとした雑談や偶然の出会いから生まれるイノベーションは、デジタル環境では生成困難です。

 特にコミュニケーションに関する項目ではデメリットを感じる人が多いという調査結果が示すように、チームワークや企業文化の継承に大きな障害となっています。

 新入社員の育成・暗黙知の伝承・組織への帰属意識の醸成など、対面でしか解決できない課題が山積しています。

☆KDDI Think with magazine「テレワークを廃止する企業が増えている?」 https://www.kddimatomete.com/magazine/240326100010/

現実的な解決策と未来への道筋

 すべての業務がリモートで業務可能ではありません。

 製造業・医療・教育・サービス業など、物理的な存在が不可欠とされる職種は多数存在します。

 ちらほら進展が見えてきているような気もしますが、この分野での普及は現状ではまだまだでしょう。

 リモートワークの完全普及とは画一的な働き方の強制ではなく、多様な働き方の選択肢の最大化として捉えるべきです。

 個人のライフステージ・業務の性質・企業文化に応じて最適な働き方を選択できる環境こそが、真の働き方革命といえるでしょう。

 現在の多様な働き方の共存こそが理想的な状態かもしれません。

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