多くの女性が服装について感じている疑問、それが「どうして女性の服にはポケットが少ないのか?」ではないでしょうか。
スマートフォン・生理用品・鍵・化粧品などむしろ持ち歩きたい物は男性より多いはずですが、なぜポケットはこんなにも少なくて浅いものが多い傾向にあります。
この現象には、歴史・ジェンダー・ファッション業界の考え方が深く関係しています。
☆R7.3.22朝日新聞「天声人語」 https://digital.asahi.com/articles/DA3S16176136.html?iref=pc_rensai_long_61_article
歴史的な背景とジェンダーの役割

18世紀頃までの女性は、取り外しのできるポケットを腰に巻いて上着の下に隠して使っていました。
しかしその後ドレスのシルエットがスリムになるとそのようなポケットは使いにくくなり、ハンドバッグを使う文化へと移行しました。
このころから「ポケットは男性のもの」「バッグは女性のもの」という暗黙の分断が始まります。
社会において女性が外で働く存在として想定されていなかったことも、この流れを後押ししました。
ファッション優先の風潮
女性服は見た目の美しさやシルエットを重視される傾向が強く、ポケットをつけることで生地が膨らむとラインが崩れるとされてきました。
そのため実用性よりも女性らしさという見た目が優先され、ポケットは省略されたり飾りポケットのみが施されたりすることが多くなりました。
抱き合わせとおしゃれ戦略

ポケットのない服を着ているとバッグが必要になります。
つまり、服と抱き合わせてバッグも売れるという商業的メリットが生まれます。
この戦略はファッション業界側には都合が良く、これがポケットをつけない理由の一つとも言われています。
機能的な女性服よりも「おしゃれで可愛いバッグ」を持つ文化を定着させることで、女性向けの商品群を多様化・高価格化することが可能になりました。
現代の声と変化の兆し

女性用ジャケットには男性用に比べてポケットが少ないということに加えて、作業服や制服の分野でも女性用ポケットの小ささが問題視されています。
近年一部のブランドでは機能性を重視したポケット付きの服を展開する動きも見られ、ようやく変化の兆しが見え始めています。
昨年1月2日に羽田空港で起きた日本航空の旅客機と海上保安庁の航空機の衝突事故では、乗客が避難する際に手荷物を持つことが禁止されていました。
事故に遭遇したと言う宮坂さん(仮名)も、もしポケットに入る大きさのもの(スマートフォンも然り)であればそれだけでも持ち出したかったでしょう。
服装にあるポケットとは単なる布の袋ではなく、自立や自由の象徴として暮らしや社会的な立ち位置にも関わっています。
☆九州朝日放送「アサデス。KBC」 https://kbc.co.jp/asadesu_kbc/detail.php?cdid=34953