私が好きなもののうち楽器があります。
全然演奏できないものもありますが、現役でバリバリいける物もいくつか所有しています。
このうち「E♭(エス)クラリネット」という楽器はインターネットオークションで購入しました。
精通者であればとても不思議に思われることの多い購入の仕方です。
それでも私が購入に踏み切ったのは、よく言われるとおり格安で購入できるからです。
滅多に買える物ではないのでなかなか比較はできない楽器です。そこで思い切って固定概念を振り切りました。
金額が小さければまあ大丈夫
インターネットオークションやフリーマーケット(フリマ)で売り上げた金額は「資産を譲渡(売却)して得た利益」にかかる所得(譲渡所得)の対象と言われています。
物をフリマで売ったときでもその売上が「何を売ったか」や「どのくらいの金額で売ったか」など、その取引の性質によって所得税法上の扱いが変わります。
☆所得税法施行令第25条
法第九条第一項第九号(非課税所得)に規定する政令で定める資産は、生活に通常必要な動産のうち、次に掲げるもの(一個又は一組の価額が三十万円を超えるものに限る。)以外のものとする。
1個または1組の資産の譲渡による収入金額が30万円以下である場合には、譲渡所得の計算の対象としない。つまり30万円以下で売ったならば非課税です。
これを逆に言うと、以下の2点がそろっていれば、譲渡所得になります。
・30万円を超えて売った
・購入価格より高く売れて利益が出た
20万円で買った楽器を50万円で売却したら差し引き30万円の譲渡所得(※ただし後述のとおり特別控除も)
譲渡所得の計算式は「売却価格 - 取得費 - 譲渡費用 - 特別控除(50万円まで)」ですから、売却代金が多額でも50万円の特別控除のおかげで結果的に課税されないケースも多くあります。
こんな物は課税対象


高額な中古品(時計・ブランド品・美術品など)を売却したり購入価格より高く売って利益が出たケースでは、一時的な取引であっても「譲渡所得」として課税対象になります。
しかし日用品なら非課税になるケースもあり、上に書いた中で言っている所得税法は元々こういった規定です。
☆所得税法第9条1項9号
次に掲げる所得については、所得税を課さない。
九「自己又はその配偶者その他の親族が生活の用に供する家具、じゆう器、衣服その他の資産で政令で定めるものの譲渡による所得」
これを要約すると「生活に通常必要な動産を譲渡して得た所得は非課税」となります。
そうすると中古の家電・本・家具や古着などの生活用物品をフリマで売っても、通常は非課税だと言えます。
☆国税庁タックスアンサーNo.3105「譲渡所得の対象となる資産と課税方法」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3105.htm
楽器はグレーゾーン

それでは楽器はどうだと思いますか?
以下のケースなら生活用(非課税)とみなされる可能性が高いでしょう。
・個人の趣味
・子どもの習い事
・アマチュアの演奏会に出演
報酬を受け取るプロとして演奏活動や音楽教室に使っている場合や投資目的である場合は、生活用ではない(課税対象)とみなされるでしょう。
楽器の種類(高級ヴァイオリン、ピアノなど)、使用状況、売却時の価格や売り方などが判断材料になります。


さらには、仕入れて売る行為(営利目的)であれば譲渡所得ではなく「事業所得」や「雑所得」とみなされることがあります。すると上で述べた50万円の特別控除は受けられなくなることになりますので、場合によっては納付税額が増えてしまいます。
☆弁護士ドットコム「売却や譲渡した場合に非課税になる生活用動産、ピアノやエレキギターもOK?」
https://www.bengo4.com/c_15/n_6480
(ここでの木村聡税理士は「生活用」の範囲をもっと狭目に捉えています。)
悪徳業者から買ってしまった

今回はあくまで売る側の話であり、私は買った側です。
私に以前粗悪な楽器を売りつけた宮坂さん(仮名)が、他の売買で所得税を誤魔化していないかが心配です。
今度宮坂さん(仮名)に会う機会があったら、嫌味を込めて「私も自宅で使っているだけですから」と声をかけて安心させようと思っています。アマチュアの演奏会で使っているんですけどね。