若手3人の部下を持つ宮坂さん。
滅多にやらない力仕事が時間内に終わらず、部下と4人で残業をすることに。
残業が終わるや否や「いやー、みんなご苦労さん!」と言いながら、部下たちと飲みに行くことにしました。
とても体力を使う仕事だったため、部下たちはもうヘトヘト。
逆に宮坂さんは指示する立場でしたのでそれほどヘトヘトではありません。
慰労を深めるという理由をつけつつ、むしろ宮坂さんは早く飲みに行きたいだけ。
「明日も通常通りなのに飲みに行く元気ないよー」という部下からの心の声がこちらにも聞こえてきます。
暗黙の了解
日本語の表現の中に「空気を読む」という言葉があります。
この言葉は、人々がその場の雰囲気や状況を察して適切な行動や発言を選ぶ能力を指します。
これを「暗黙の了解」とも言います。
それを少し視点を変えてみると、空気を読むという行為はまるで本を読むようなものと言えるのではないでしょうか。
本を読むときに私たちは文章や言葉から意味をくみ取るだけでなく、作者の意図や背景にある物語を理解しようとします。
同じように空気を読もうとするときも、表面に現れる言葉や行動だけでなくその背後にある感情や意図もくみ取ろうとするのです。
これは文章の間の行間を読むことに似ており、文字や単語だけでなく、それらが伝えようとする感受性や共感力が試される行為でもあります。
重視するのは集団か自己か

言葉にされていない感情や状況を理解し、それに基づいて反応する能力は文化的背景や経験に大きく依存します。
例えば日本のように集団の調和を重視する文化では、空気を読む力が特に重要視されます。
逆に海外で見かけるような個人の自己表現を重んじる文化では、空気を読む行為はあまり求められないケースもあります。
ただし、海外に空気を読むという考え方が無いというわけではありません。
慣用句のように「read the room」という言葉があります。
直訳でもなんとなく伝わりません? Can you read the room?
☆ケンブリッジ大学「dictionary」 https://dictionary.cambridge.org/ja/dictionary/english/read-the-room (ブラウザの翻訳機能を活用してください)
空気を読むことのメリットとデメリット
空気を読む能力には多くのメリットがあります。
例えば人間関係を円滑に進めることができたり、トラブルを未然に防ぐことができたりします。
しかし過度に空気を読みすぎることは、自己表現を抑制したり本音を隠したりする原因にもなり得ます。
一方で、空気を読む行為は誰もができるわけではありません。
環境や性格さらには発達障害の特性などが影響して、「本当に読めない」ことで誤解を生むデメリットもあります。
このような状況においては空気を読むことを無理に求めず、より明確なコミュニケーションを取る工夫が求められます。
物語としての視点

もし空気を読むことを一つの「物語を読み解く」行為と捉えるなら、それは読み手の解釈次第で多様な意味を持つものです。
その場が同じ状況でも、読み手の人生経験によって解釈が異なるのはまさに読書体験と同じです。
空気を読む力は経験を重ねることで磨かれますが、その解釈が常に正しいとは限りません。
だからこそ空気を読むときには自分の解釈が他人と異なる可能性を念頭に置きつつ、柔軟に対応することが重要です。
苦手な人もいます
空気を読むことで、その場をより豊かで調和の取れたものに変える可能性を秘めています。
しかしそれに縛られすぎず、状況によっては「読まない」という選択も必要です。
そしてそれは読み手の自由であることを忘れてはいけません。
また空気を読むことが苦手な読み手に対しては配慮が不足している可能性を考慮するべきです。
「空気を読む」という行為は言葉のコミュニケーションを超えた高度なスキルであり、一つの本をどう解釈するかということと同じです。
ですからその読み方には正解も不正解もありません。
空気を「読むもの」ではなく「読みもの」として捉えることで、私たちはより深く他者や状況を理解しようとする新たな視点を得ることができるでしょう。
せっかく読むなら、空気よりも相手の心。
☆株式会社cotree(コトリー) https://cotree.jp/columns/1057