2004年から法科大学院の制度が始まりました。
法学出身者だけでなく、法学以外の専門性を持つ人材にも門戸を広げることを目的として創設されたものです。
社会の複雑化に伴い、法律の知識だけでなく多様な分野の視点やスキルを兼ね備えた法律家が求められているからです。
しかし社会人や非法学部出身者の法科大学院への入学者数は減少傾向にあり、教育課程や教育方法の改善が求められています。
1月10日付け朝日新聞「時時刻刻」では、この制度には誤算があったと指摘しています。https://digital.asahi.com/articles/DA3S16123037.html?ref=pcviewer
法科大学院の多様性確保の取り組み

法科大学院が多様なバックグラウンドを持つ者を法曹として養成できるよう、これまで司法制度改革の理念を踏まえての制度設計が文部科学省で行なわれてきました。
多種多様な勉学経験や社会人としての貴重な経験を持つ者など、複雑化する現代社会に対応できる法曹を輩出するため、様々なバックグラウンドを持つ学生の受け入れが期待されています。
早稲田大学の法科大学院の学生は東日本大震災や能登地震の被災地に出向いて被災者に困りごとを聞き取り、その解決策を考える活動を行なってきたといいます。
法学以外の専門性を持つ人材がもたらすメリット

法律が具体的にどのように実践されるかを理解するためには、その分野の専門知識が不可欠です。
様々な分野の専門知識を活用することで、従来の法的アプローチとは異なる新たな視点から問題に取り組むことが可能です。
多様なバックグラウンドを持つメンバーがいると、チームでの相乗効果によって議論や共同作業において創造性や深みが生まれます。
社会のニーズに対応できない弁護士
「司法試験のための予備校」「時間と費用がかかり過ぎる」と揶揄される法科大学院を尻目に、2011年に入って司法試験への近道となる「予備試験」の制度が生まれました。
しかしこの「法科大学院」と「予備試験」の2つの制度が並立している現状でも、司法試験の受験者と合格者の数は安定していません。
ただ法科大学院の在学中もしくは修了してから司法試験を受ける受験者の減少には歯止めはかからず、これでは法科大学院としての役目が果たされていません。
東京大学名誉教授で弁護士の内田貴さんは新聞記事の中でこう指摘をしています。
- 多様な能力を持つ弁護士を増やすためには、費用と時間がかかる法科大学院と司法試験を切り離すべきだ。
- 先端技術の開発や事業の国際展開が加速するビジネスの世界では、法学以外の専門性を持って紛争を回避する法律家への需要が高まっている。
- 法科大学院には、法学以外の専門性を持った人材に法学を教えたり弁護士になった人が金融や税務などの専門性を高めたりする教育機関としての役割が求められている。
この3つが達成できれば少なくとも、以前からのとっつきにくいイメージは払拭できるかな?
自戒の意味も込めて…