流体力学の技術を基とするゆで卵の調理方法としてナポリ大学のエルネスト・ディマイオ教授らが「周期的調理法」を開発しました。
熱湯のボウルと水のボウルを32分間で8往復させることで、最高の栄養値と食感を得られると言っています。
この研究実験のために数百個もの卵が使われ、その大量の卵は家族に振る舞われたそうです。
☆2025年2月11日付朝日新聞「最高のゆで卵の作り方、教えよう」 https://www.asahi.com/articles/DA3S16146567.html
どうすれば美味しいものができるか

人間は、甘み・旨み・脂肪を好む傾向があります。
これは生存に必要なエネルギーや栄養素を見極めるため。
最初は「生き延びるための美味しさ」からスタートしました。
火を使うようになると「焼くと美味しい」「煮ると食べやすい」ということが発見されます。
例えば、肉を焼くと香ばしい匂いがするのはアミノ酸と糖の化学変化(メイラード反応)です。
☆JMARS(日本メイラード学会) http://www.maillard.umin.jp
まずはわたくしめから

そもそも昔の人々が食べ物の安全性をどうやって判断したのかは、美味しいかどうかと同じように試行錯誤・観察・経験の積み重ねで発見されてきました。
最初はまさに命がけで食べ物の安全性を試していました。
まずは人間以外の動物が食べているものを観察して、食べられるのかを推測します。
いきなり大量に食べるのではなく少しずつ口に含んでみて、苦みや刺激がないかや体調が悪くならないかを確認。
「毒味役」という役割の人がいたことも聞かれます。
その後火を使うようになってからは、焼く・煮る・発酵させることで毒を取り除くこともできるようになりました。
伝承と経験の積み重ね

昔の人々は経験を積み重ねるしかありませんでした。
カビが生えていれば見た目で判断し、異臭がするものは嗅覚で察知します。
青酸カリがアーモンドのような匂いがするように、強烈な苦みやえぐみがあるものは毒の可能性が高いです。
他の動物が食べた後にどう変化するかも観察してきました。
ただし人間にとっては毒きのこであるとされているベニテングタケをリスが食べるなど、動物には問題なくても人間にとって有毒な場合もあります。
何世代にもわたって「これは食べられる」「これは危ない」と伝えられてきました。
そういった数々の研究の結果、生き延びた今の私たちにその知恵が伝わっているわけです。
チキンラーメンのたまごポケットでも作れる半熟卵

食材をたくさん費やしてやっとたどり着いた完成品が、現在の多くのファンを引き寄せていています。
以前、NHK連続テレビ小説でも放送されていました「まんぷく」では、食品会社の創業者が試行錯誤を繰り返して考案した即席麺を取り上げたものです。
失敗したたくさんの食材を家族が消費しているという場面を見た記憶があります。
https://www.chickenramen.jp/about
https://www2.nhk.or.jp/archives/movies/?id=D0009050960_00000
最初は生きるための「食べられるか?」から始まり、そのうち「もっと美味しくしたい!」という欲求に変わっていきました。
「どうすれば美味しくなるか?」と追い求めた即席麺も、やはり「試して」「観察」「改良」の繰り返しで進化していきました。
これまで人気者だった半熟卵も、これからさらなる未知の調理法に取って代わる存在が現れ、これまでの人気が逆転する日も来るかもしれません。