ベテラン建築家の悲哀の続き(印紙税)

(前回のあらすじ)

 建築業を営む宮坂さんと私との間で作成した、住宅の建築工事請負契約書に不備が見つかりました。

 宮坂さんは申し訳無さそうに私に謝り、翌日には正しい請負金額の入った契約書と交換することに。

目次

こちらも悪うございました

毎日かさねがざね、ごめんね。

 宮坂さんはすぐ契約書を作り変えてくれました。

 間違えている契約書と差し替えましたので、今は正しい契約書しか手元に残っていません。

 正誤2通ずつ合計4通いずれの契約書にも宮坂さんが収入印紙を貼ってくれていました。

 誤った契約書に貼られている収入印紙は一体どうするのだろうと心配になりましたが私に責任は無いとも言い切れず、しかもけっこう高額の収入印紙だったので今回はこちらが2通分お支払いしました。

丸八真綿から界王拳へ

 前回で説明した「文書課税」のとおり、印紙税が課税されるのは契約が成立した時でも履行された時でもありません。

 契約書を作成し相手に交付する時点で、納付(原則は収入印紙の貼り付けと消印)が必要です。

 もし税務署の税務調査で収入印紙不貼付と指摘されるようなことになったら、3倍の税額(過怠税)として賦課徴収されてしまいます。

 2倍の悲しみを隠したことで、それが3倍になってしまうかもしれません。

あの日あの頃 昭和なつかし部
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2倍を隠すと 3倍界王拳 (pixiv.net) になります。

口約束でも契約は有効

 「文書課税」には150年前では考えも及ばなかったであろう抜け道があります。

 極論を言えば「文書を作らないこと」です。

 それは本当に何も作らないという意味に加えて、「書面の」文書を作らないということです。

 「書面」で作ったとしても当事者さえ納得が得られれば、前回に触れた「証券印紙規則解全」に基づかないオリジナルな書式にしてしまうことも可能です。

 例えば「署名押印をしない」とか、課税になる文書を1通だけ作ってもう1通をコピーで済ましてしまう方法とか。

 電子メールでもFAXのやり取りでも、届いたものを自分が勝手に印刷するだけなら課税にはなりません。

 もちろん口頭契約でも。私の減らず口に収入印紙は貼れません。

一石二鳥の税金たち

 印紙税は廃止すべきという意見があります。

 今や取引自体ネット上で完結させることができる世の中ですので、書面の契約書を作ろうという事業者は減りつつあります。

 そのため印紙税の存在価値は縮小するばかりであると。

 しかし、私はこう考えます。

 印紙税に疑問を持つ納税者の皆さんが課税文書を作らない方向に進んでいくことで、文書のデジタル化を推進できるのです。

 印紙税の課税を避けるために書面の文書は作らないようにしようと。

 そのためには、今後も印紙税が継続されるべきなのです。

 財務省の資料では厳密には「印紙税」ではなく税金以外の行政手数料にも使われる「印紙収入」とされていますが、実は1年間でおよそ1兆円の収入財源なのです。

 これではなかなか廃止の方向には進まないでしょう。

 酒税やたばこ税も今日まで続いています。

 それは消費が増えたら税収も増え、消費が減れば健康増進を図れる。どちらも国全体にはいいこと。

 そんな考え方にも似ているような気がしませんか?

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