宮坂さんは何も恨まれることをしていません。「何の覚えも無い」と本人も言っています。
それにも関わらず、宮坂さんのような人が憎まれ口を叩かれるという場面に遭遇したことはありませんか?
これは言葉の伝え手が相手(宮坂さん)にラベルを貼っている可能性があります。
ラベリングテクニックは人間の行動について言われますが、もともとは機械学習やデータサイエンスの分野においてデータに正解やカテゴリーを付与する作業のことです。
例えばAIが作成した猫の写真に「猫」というラベルを付けたり顧客のレビューに「ポジティブ」「ネガティブ」「いいね」といった感情のラベルを付けることで、AIがパターンを学習するようになります。
ラベリングテクニックのメリット

正確にラベル付けされたデータを大量に用意することで、機械学習モデルは高い精度で予測や分類を行えるようになります。
医療診断・自動運転・画像認識・自然言語処理・音声認識など様々な分野でラベリング技術を活用でき、さらにはスパムメールの検出や商品推薦システムまで私たちの日常生活を支える多くのサービスがこの技術に支えられています。
ラベルがあることで何を学習すべきかが明確になるので、これにより開発者は効率的にモデルを改善できます。
データの更新に手間がかかる
質の高いラベリングには膨大な時間と人的コストがかかり、プロジェクト全体の予算を圧迫することがあります。
データに含まれていない新しいパターンや状況は一度ラベリングがされていても対応できない場合があるので、継続的なデータの更新が必要です。
ラベリングの対象は人間にも

ラベリングを行う人間の主観や偏見は機械学習モデルと同様のバイアスを学習してしまい、不用意なラベリングを受けることによって本人の行動や周囲の期待に影響を与えます。
- 教育現場での成績評価や能力レベルの判定
学校の授業中に「この子は数学が苦手」というラベルを貼られた子どもは、そのように思い込む危険性が高まり、そのラベルのせいで本当に苦手になってしまいます。
「問題児」といったラベリングがされればその人の可能性を制限してしまう一方、現在「優等生」のラベリングがされているのであればさらに勉強させることで「もっと優等生」になれるかもしれません。
- 複雑なものが単純化されてしまう
人間の個性や能力は心理学研究での分類において非常に複雑で多面的なものであるのに、ラベリングは往々にして単純化されてしまいます。
もし文化的背景や社会的偏見が混入してしまうと人事評価での性格特性や適性、医療現場での診断名や症状の分類を誤ってしまいます。
社会保障制度での支援対象者の区分の際には、差別や不平等を助長することもあります。
絶えず成長しましょう
私はラベリングやバイアスという言葉に悪いイメージを持っています。
しかし、そんな考えこそ然り。
人間は絶えず成長・変化しうる存在であるはずなのに、一度貼られたラベルがずっと残り続けてしまうことが多く起こります。
継続的かつ慎重な見直しを意識していないとせっかく生まれるかもしれなかった貴重な仕事や人間関係、そしてコンピューターシステムも日の目をみることなく古びれてしまいます。
そんな人間に対するラベリングが適切に活用され、お互いの理解や支援につながっていくといいですね。
☆グロービス学び放題「何度も言われ続けると…ラベリング・テクニックの誤用」 https://globis.jp/article/1880/