私がサラリーマンをやめて個人事業者となった今、名刺の意味合いをよく認識できるようになりました。
名刺を渡した途端に顔と名前が一致することはなくても、その人の名刺が手元にあるということは一度でもお会いしたという証拠。
しかし公務員だった頃の私には、名刺の意味合いを感じることがほとんどありませんでした。
もし公務員の名刺を受け取ったとしても、商売としての取引が必ずしも増えるわけではありません。
逆にこちらが受け取ることがあっても、調査担当者の立場ならせいぜい調査資料などに糊で貼り付けるだけです。
ほとんどの名刺が自費負担

民間企業では社員の名刺は会社が費用を負担し、統一されたデザインで支給されるのが一般的です。
しかし自治体職員の場合の名刺作成費用は自分で負担することが多く、必ずしも公費で賄われていないのが現状です。
☆朝日新聞「公務で使うけど…自治体職員の名刺 自腹は妥当?慣習を改めた例も」 https://digital.asahi.com/articles/ASS5Y3FS1S5YIIPE02HM.html?iref=pc_ss_date_article
なぜ自費が当たり前なのか?

とある時期に「自治体職員の名刺を公費で負担することはなじまない」旨の通達が旧自治省(現在の総務省)にあったとのこと。
名刺は個人で使用するものという考え方が根底にあるようです 。
そこから職員の名刺は自己負担とする慣例を採用している自治体が多いようで、2021年に行われた調査では約91%の自治体職員が名刺を自費で作成していると回答しています。
名刺の使用頻度は部署によって大きく異なるため、一律に公費で支給することが難しいという実情もあります。
☆ジチタイワークス「公務員の名刺はなぜ自腹なのか?」 https://jichitai.works/article/details/787
変わり始めた自治体の動き
近年、一部の自治体ではこの慣習を見直す動きが出てきました。
例えば、札幌市では名刺作成を外注する場合の費用を公費で負担する改革が行われました。
そして新潟県三条市でも同様の改革が進められています。
これらの動きは、職員の負担軽減や業務効率化を目的としたものです。
☆選挙ドットコム「役所の職員が自腹で名刺作成!?その驚きの実態と改革の必要性」(衆議院議員川崎ひでと氏による音声配信を基にした文章) https://go2senkyo.com/seijika/182630/posts/1052313
今後の展望と課題

全国的にはまだ多くの自治体で自費負担が続いており、統一的な対応には至っていません。
しかし名刺の自費負担という慣習は、時代の変化とともに見直されつつあります。
国である税務署の職員は決められたエクセルの様式に所在地や氏名などを自分で入力して、普通紙と兼用するプリンタを使って厚手の紙に印刷しています。
職員の業務効率やモチベーション向上を図るためにも、名刺作成費用の公費負担について国だけでなく各自治体での議論と見直しが求められるでしょう。