ちゃんと仕事してくださいね(委任と請負)

 あなたは誰かから仕事を頼まれたら、相手の意図をしっかり認識できていますか?

 いつも仕事が早くてていねいな宮坂さんは、今回に限ってはやんごとなき事情により仕事が出来上がりそうにありません。

 はためには強がっていますが、めずらしく不安になっています。

 もしかしたら取引先は、「他の人に振り替えよう」とか「責任を取らせよう」「相当な違反があったときは法的手段に出よう」などと思っているかもしれないのです。

 こういった契約の形態や内容を法律では「委任(いにん)」と「請負(うけおい)」で区別します。

目次

委任契約

 ある業務や事務の処理を任せる契約を指します。

 民法第643条で規定されており、成果ではなく「行為」に重きを置かれています。成果の達成自体は必須ではありません。

 具体例として、弁護士に対しての訴訟代理や税理士に対しての確定申告があります。

 医師、行政書士などの専門家に業務を依頼するとしても、それは行為の依頼です。

 業務の遂行には誠実さや注意義務を求められますが、必ずしも成果を保証するものではありません。

 弁護士が必ず裁判に勝つことを保証するわけではなく、税理士も節税を約束するわけではありません。

 それでも報酬は発生します。

 契約は双方いつでも解除することができます。(解除の仕方によっては損害賠償責任が生じる場合がある)。

 依頼者が過剰な期待を持たないよう説明が必要です。

請負契約

 一方が仕事を完成させることを目的とする契約のことです。

 意訳すると、仕事の完成を約束してその結果に対して報酬を支払う契約であると民法第632条で規定されています。

 ですから成果物が完成しなければ契約の目的は達成されません。

 原則として有償が約束されますが、逆に成果物が完成しなければ報酬は発生しません。

 成果物が完成するまでは外部要因があったとしても、請け負う側が責任を負います。

 契約の解除は一方的に行えない場合が多く、よほどのことがない限りは契約内容に従う必要があります。

 成果物が完成しない場合のペナルティや補償は事前に取り決めておくべきです。

 具体例は

  • 建物の建築(工務店に対して)
  • システム開発(プログラマーに対して)
  • ロゴの制作(デザイナーに対して)

実務上の注意点

これでパラリンピック金メダル確実?

 「障がい者に施術を行い、歩けるようにしてほしい」→?

 歩けるようにすることが仕事の完成とも考えられますが、「歩ける」の意味は施術を受ける障がい者本人の主観が決めることです。

 義足を取り付けて足が動くようになったとしても、「結合部分に多少の違和感があるような気がする」なんて言われたら仕事が完成したかどうか請け負う側は判断がつきません。

 仮に「障がいを解消できなかったら損害を賠償する」という規定があったとしても、請負の可能性は低いと思われます。

 まさか「歩けるかどうかはどうでもいい」なんて言う医療機関はないでしょうけど、決して委任か請負かが曖昧にならないように契約内容を明確にすることが重要です。

 成果物の有無や責任範囲にしっかり注目しましょう。

契約書はすっ飛ばさずにちゃんと読んで

 あらためて短く言うと、

 委任は「業務を遂行してもらうこと」

 請負は「成果物を完成させてもらうこと」

を目的とした契約です。

 それぞれの特性を当事者双方が理解し、依頼内容に応じた適切な契約を結んでください。

 ところで、国税庁HPでは「紳士服のイージーオーダー(寸法直し)」が請負であるかが述べられています。

 ここからここまで何センチの長さにするのは仕事の完成と言えますが、似合っているかや女性からモテるかどうかまでは委任されても責任は取れません! 請負の意義|国税庁

 ちなみに…

 印紙税法では作成された契約書が請負に関する文書にあれば課税文書とされますが、委任に関する文書であれば不課税文書となります。

 印紙税ではここが課税か不課税かの際どい境目なのですが、このあたりの件についてはまた次の機会に。

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